100年後の未来を紡ぐ科学。超ひも理論研究者 橋本幸士の「詩と時間」箱舟教室レポート(2)
インタビュー・執筆:
未来を生き抜く知恵をテーマとした、アートサイエンス学科「箱舟教室」の第2弾は、理論物理学者の橋本幸士氏を招いた。「この世界はひもからできている」という、超根源的な世界の成り立ちを問う物理の先端仮説・超ひも理論を研究する橋本氏は、「いまの研究が、100年後に役立つかもしれない」と語る。昼夜、数式と真っ向勝負を挑むそのまっすぐなまなざしから、「詩と時間」というテーマが浮かぶ上がってきた。物理(サイエンス)と文学(アート)を行き交う彼の世界とは?
僕は大阪大学で物理学の教授をしています。中でも素粒子物理学を研究している理論物理学者です。今回の講義のタイトルである『詩と時間』と聞いて、みなさんはどんなことを想像しますか?
詩は文芸という意味では、アートでもあるでしょう。アート的な見方で、世界を記述する。ざっくり言うとそんなことかもしれません。一方で時間は物理学的な考え方です。サイエンスの見地からこの世界を記述する時、時間は重要な要素です。
この講義では、一見関係のなさそうな詩と時間が、理論物理学者である僕の中でどんなふうにつながっているのかをお話したいと思います。...continue to read